a2 Tech blog

試したこと・調べたこと・感じたことを発信するITエンジニアの日記です。仕事とは直接関係ないけど興味あることを模索していきます。

書評 ロケットスタート仕事術「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」(中島聡 著)

すでにベストセラーなので読んだ方も多いかも知れません。ロケットスタート時間術 という時間管理に関する書籍ではあるものの中島聡さんの熱い想いが詰まった書籍なので、特に エンジニアの方 に読んでもらいたいと思いました。私も一応エンジニアなので私が感じたことを書くことで少しでもエンジニアの方が興味を持ってくれればなぁと思い、ブログに書くことにしました。

普段、読んだ本の所感は 読書メーター にサラッと書いて終わりにしています。気になる書籍は、少し長めにこうしてブログに掲載しています。

i.bookmeter.com

私もこの本を読むまでは中島聡さんについて詳しくは知らなかったのですが、日本マイクロソフトのde:code(2017/5/23-24) にゲスト出演されていた 堀江貴文さん のセッションを聞かせてもらった際に、購読すべきブログに中島聡さんの名前を挙げていたことがきっかけで、本書を読んでみようと思い購入しました。

本書でも中島聡さんの経歴がしっかりと語られていますが、中島聡さんと言えば、Windows95の開発に携わられ ドラッグ&ドロップ を普及させた人物というのが代名詞です。現在もエンジニアとしての活躍されている方です。

時間術の本ではあるが・・・

本書は、時間管理の方法としてロケットスタート時間術と題して40年間実践されてきたことを書かれています。もちろん、その方法はとても素晴らしい考え方で自身の仕事人生に取り入れて実践すべきことだと感じました。ただ私もエンジニアとして日々活動している身として中島聡さんが歩んできた エンジニアとしての考え方 の部分がすごく参考になると思いました。

ただの時間術のビジネス書でなく、エンジニアとしてのどのように活躍していくべきかという1つの指針 が書かれているように思います。

その中でも私が特にこの考え方は真似したいと思ったことを3つあげます。興味を持った方は是非、購入して読んで見てください。必ず今後のエンジニア人生のためになると思います。

「まず作ってみる」が、未来を変える

1つ目は、「まずプロトタイプを作る」 という仕事法です。中島聡さんがCANDYという機械や電子機器の設計書を作るためのソフトウェア、今で言うCADソフトウェアを開発していたというエピソードが書かれています。その開発は、最初の2週間で「なんちゃってCANDY」というプロトタイプを作成し、それを見せることでアドバイスを得る、改善するということを繰り返していたそうです。この仕事の進め方は、現在で言うところの Agail に通じるものがあるように私は感じました。また、中島聡さんはCANDY以外にも、OSにATOKを搭載するにあたりATOK側をなんちゃってATOKとしてプロトタイプを作成したり、マイクロソフトで次世代OSのプロトタイプを作成したことで、それがのちにWindows95の種となったエピソードの書かれています。

机上で設計し認識合わせを行なって進めていく方法は、日本のSIという特殊な文化が生み出してしまったものだと思っています。やはり、実際に作ってみる、プロトタイプを元に認識を合わせる、プロトタイプを改善していく、そういうアプローチでモノづくりを進めた方が本来は良いのではないかと思います。そのためには、いかに早く形にできるか という所が重要で、自分で手を動かして作ってみる 精神がエンジニアにとって重要な資質ではないかと思いました。

見積もるには、とにかくやってみることだ

2つ目は、作業の見積もりについてです。1つ目に取り上げた「まずは作ってみる」という考え方に共通するところもありますが、何か作業を依頼された際には、安請け合いをせずに、最初の2日(締め切りまでの期間の2割) でやってみる、そして8割終われば期間内でできると判断しそうでなければ期間内でできないと伝えるというロケットスタート仕事術についての考え方のベースになっている考え方です。

エンジニアであれば、見積もりを行うことは頻繁にあるのではないでしょうか。私も色々な仕事の依頼でどれぐらいで出来そうか聞かれます。その際には、何か過去の知見をあたかもそれらしい理由で見積もりに仕立てあげて、これぐらいで出来そうですと答えているのが実際です。しかも見積もりをそれらしく見せるために2日ぐらい時間を使ってしまったりします。それってムダだなぁって改めて痛感させられました。

2日あるなら、まずはやってみる。そこで得られた情報を元に判断する。これが見積もりのやり方なのかもしれないですね。エンジニアの仕事って見積もれるものじゃないと思ってます。もし簡単に見積もれる仕事であるなら、それはエンジニアがやるべき仕事ではないのかもしれません。

集中しなきゃいけない仕事はするな

本書では、仕事に対する考え方についても色々書かれています。私が気になったのは、「好きな事に思いっきり向き合う」「恐るべきは自分のやりたい事に不誠実になる事」「集中しなきゃいけない仕事はするな」 という言葉です。3つともに共通することなのですが、中島聡さんの時間術を実践して、自分の好きな事に時間を使いましょうという熱いメッセージです。

最近の社会の風潮として、早く帰りましょうみたいな感じになっています。過酷な長時間労働は悪であるのはもちろんその通りだと思いますが、自分が本当に心からやりたいことであれば、時間は苦にはならないのではないのでしょうか。私も小さい頃はテレビゲームを時間を忘れて没頭したものです。その時は、集中しようなんて考えてないわけで、苦にもならないわけです。極端な言い方ですが、そういう感覚で仕事ができるかどうかなのではないでしょうか。 (決して、長時間労働を肯定しているわけではありません。)

エンジニアの方は、つまらない雑用に忙殺されずに自分が本当にやりたいこと(新しい技術への取り組みとかですかね)に没頭できる環境を見つけるべきというメッセージだと受け止めました。

さいごに

あとがき に書かれている内容がとても私にはグサッと刺さりました。

日本では、そんな「ITインフラ」の構築はITゼネコンと呼ばれる、巨大なIT企業が受注し、設計だけして開発は下請けに丸投げする、という形で作られるのが一般的です。・・・中略・・・しかし、そんな開発手法では決して良いものは作れないし、優秀なエンジニアが働きたいような環境は作れません。国際競争力のあるソフトウェア企業も、そんな業界からは決して生まれてきません。

私もこの考えにはすごく共感します。この問題にどう取り組んで答えを見つけていくのかが今のSIerに求められていることだと思っています。

中島聡さんの熱い思いがつまった本書は是非、エンジニアの方に読んで欲しいです。

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である

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